【tig】カスタムキーバインドを追加してGit操作を効率化する

設定ファイルの場所

tigのキーバインド設定は ~/.tigrc ファイルに書く。ファイルが存在しない場合は新規作成する。

touch ~/.tigrc

キーバインドの基本構文

キーバインドの設定は以下の構文で記述する：

bind [keymap] [key] [action]

keymap: キーが有効な画面（main、diff、logなど）
key: 割り当てるキー
action: キーに対応するアクション

よく使うキーマップ

キーマップ(画面)	説明
generic	全画面で有効
main	メイン画面（コミット一覧）
diff	差分の表示画面
log	ログ表示画面
tree	ツリー表示画面
blob	ファイル内容の表示画面
blame	blame表示画面
refs	ブランチ・タグ一覧画面
status	ステータス画面

変数

アクション内で使用できる変数は以下の通り。

変数	説明	使用可能な画面
`%(commit)`	現在選択されているコミットのハッシュ	main、log、diff
`%(branch)`	現在のブランチ名または選択されたブランチ名	refs、main
`%(file)`	現在選択されているファイル名	tree、blob、status
`%(directory)`	現在のディレクトリパス	tree
`%(lineno)`	現在の行番号	blob、blame
`%(author)`	コミットの作成者	main、log
`%(date)`	コミットの日付	main、log
`%(tag)`	選択されたタグ名	refs
`%(remote)`	リモート名	refs
`%(ref)`	選択されたリファレンス（ブランチ・タグ）	refs

プロンプト機能

アクションで%(prompt プロンプトメッセージ) を使用するとユーザー入力を受け取れる：

# ~/.tigrc
# ブランチ名を入力してチェックアウト
bind main S ?git switch -c "%(prompt Enter branch name: )" %(commit

変数の実用例

# ~/.tigrc
# コミット関連の変数使用例
bind main R !git reset --hard %(commit)            # 選択コミットにリセット
bind main c !git cherry-pick %(commit)             # 選択コミットをチェリーピック

# ブランチ関連の変数使用例
bind refs c !git checkout %(branch)                # 選択ブランチをチェックアウト
bind refs p !git push origin %(branch)             # 選択ブランチをプッシュ
bind refs d !git branch -d %(branch)               # 選択ブランチを削除

# ファイル関連の変数使用例
bind tree o !open %(file)                          # 選択ファイルを外部アプリで開く
bind blob l !less %(file)                          # 選択ファイルをlessで表示
bind blob v !vim %(file) +%(lineno)                # 選択ファイルを特定行でVimで開く

# 作成者・日付情報の活用例
bind main @ !echo "Author: %(author), Date: %(date)" # 作成者と日付を表示
bind main L !git log --author="%(author)"          # 同じ作成者の他のコミットを表示

アクションの感嘆符と疑問符の違い

tigのキーバインドでコマンドを実行する際、プリフィックスによって実行方法が変わる：

プリフィックス	動作	使用例
`!`	即座にコマンドを実行する	`!git push origin %(branch)`
`?`	実行前に確認を求める	`?git branch -d %(branch)`

感嘆符プリフィックスを使う場面

間違えて実行しても問題無い操作や、頻繁に使うコマンドに適している。

読み取り専用の操作：git show、git log、ファイル表示
リスクの低い操作：ファイルを外部エディタで開く
頻繁に使う操作：確認が煩わしい日常的なコマンド

疑問符プリフィックスを使う場面

間違えて実行すると取り返しのつかない操作や、慎重に行いたい操作に適している。

データを変更する操作：ブランチ削除、コミットリセット
取り消し困難な操作：強制プッシュ、ファイル削除
重要な操作：マージ、リベース

カスタムキーバインド例

ブランチ操作の効率化

# ~/.tigrc
# ブランチをチェックアウト
bind refs = !git checkout %(branch)

# 現在のブランチから新しいブランチを作成
bind main B !git checkout -b %(prompt Enter branch name: )

# ブランチを削除
bind refs D !git branch -d %(branch)

コミット操作の強化

# ~/.tigrc
# コミットを修正
bind main A !git commit --amend

# インタラクティブリベース
bind main R !git rebase -i %(commit)^

# コミットをリセット（soft）
bind main S !git reset --soft %(commit)^

# コミットをリセット（hard）
bind main H !git reset --hard %(commit)^

プッシュ・プル操作

# ~/.tigrc
# 現在のブランチをプッシュ
bind generic P !git push origin %(branch)

# 強制プッシュ
bind generic F !git push --force-with-lease origin %(branch)

# プル（rebase）
bind generic U !git pull --rebase

ファイル操作

# ~/.tigrc
# ファイルをステージング
bind status a !git add %(file)

# ファイルのステージングを解除
bind status u !git reset HEAD %(file)

# ファイルの変更を破棄
bind status D !git checkout -- %(file)

外部エディタ連携

# ~/.tigrc
# 現在のファイルをエディタで開く
bind generic E !vim %(file)

# コミットメッセージを編集
bind main e !git commit --amend -m "%(prompt Enter commit message: )"

キーコンボによるキーバインド

tigでは複数キーの組み合わせ（キーコンボ）を使った効率的なキーバインドが設定できる。
ただしキーコンボが一致した時点でそのアクションが実行されるため、キーコンボを決める場合は使われていないキーを選ぶ必要がある。

例えば、sはステータス画面の表示に使われているため、ssのようなキーコンボは設定できない。
@のように使われていないキーをプレフィックスにするとよい。

例:

# ~/.tigrc
# Git操作系（gプリフィックス）
bind generic @gd view-diff      # gd: 差分ビューを開く
bind generic @gt view-tree      # gt: ツリービューを開く
bind generic @gl view-log       # gl: ログビューを開く
bind generic @gb view-refs      # gb: ブランチ一覧を開く
bind generic @gs view-status    # gs: ステータスビューを開く

# ブランチ操作系（bプリフィックス）
bind main @bc !git checkout -b %(prompt Enter branch name: )  # bc: ブランチ作成
bind refs @bd !git branch -d %(branch)                        # bd: ブランチ削除
bind refs @bm !git merge %(branch)                           # bm: ブランチマージ
bind refs @br !git rebase %(branch)                          # br: ブランチリベース

# コミット操作系（cプリフィックス）
bind main @ca !git commit --amend                            # ca: amendコミット
bind main @cr !git revert %(commit)                          # cr: コミットリバート
bind main @cp !git cherry-pick %(commit)                     # cp: チェリーピック
bind main @cf !git commit --fixup=%(commit)                  # cf: fixupコミット

# プッシュ・プル系（pプリフィックス）
bind generic @pp !git push origin %(branch)                  # pp: プッシュ
bind generic @pf !git push --force-with-lease origin %(branch) # pf: 強制プッシュ
bind generic @pl !git pull --rebase                          # pl: リベースプル
bind generic @pt !git push --tags                            # pt: タグプッシュ

以下のようにキーコンボを考えるとよい。

プリフィックスキーで機能をグループ化（g=Git、b=Branch、c=Commitなど）
直感的なセカンドキー（d=diff、t=tree、l=logなど）
類似操作は同じプリフィックスにまとめる
よく使う操作は短いコンボにする

設定の確認

設定ファイルを編集した後にtigを再起動すると設定が反映される。 hキーを押してヘルプ画面を開くと、設定したキーバインドが表示される。